カンボジア・プノンペン市スティングミアンチェイ地区
VDTO(Vocational Developmental Training Organization)周辺対象支援事業
子ども達や地域の人々の集いの場としての「地域ひろば」の創設
■事業名 住民自治活動活性化活動
学校を地域の中心に―スラムの街子ども達の自治活動を応援しよう
3カ年計画
■実施場所 カンボジア王国 プノンペン市 スティングミアンチェイ地区
Vocational and Developmental Training Organization(VDTO)及びVDTOを含む同地区一帯
■実施期間 2008年4月1日~2013年3月31日
■計画概要
- 2008年度 住民自治組織立ち上げのための準備組織として、「VDTO-OB会」または「スティングミアンチェイ青年会」設立のための現地調査と準備を行う。同時に同校に隣接する住居を借り上げ、「地域住民ひろば」としての活用の可能性を探る。
- 2009年度 前年度試験的に設置した「地域住民ひろば」の活用方法を検討するための地域住民を中核とする「運営委員会」を設立し、これらを母体に地域の子ども達や住民のコミュニティスペースとしての活用方法や、同委員会を中心にした地域まつりの企画運営の支援を行う。
- 2010年度 スティングミアンチェイ地区自治組織を設立し、授産施設やマイクロビジネス等の発足を検討する。「住民ひろば」の恒常的な運営をめざす財政基盤作りなどの支援を行う。
学校を地域の中心に―スラムの街子ども達の自治活動を応援しよう プロジェクト
計画のあらまし
本事業実施地であるスティングミアンチェイ地区は、プノンペン市中心地から南西1.5kmほど離れたスティングミアンチェイ川流域にあり、ライフラインはもとより生活道路なども未整備のため、雨季はいたるところで沼地状態になり、低地の家屋では床上浸水するなど、衛生・安全面の劣悪な地区である。また近隣にはプノンペン市内のゴミを一手に集約するゴミ集積場があり、そこで暮らす人々・子ども達も数多くいる。現在カンボジアでは日本も含め世界各国の政府・非政府機関による国際支援活動が展開されており、同地区ではそれら内外の支援団体によって、住環境改善や給食支援、生活支援、学校の建設などが取り組まれてきたが、いずれも有効な成果を挙げているとはいえない状況にある。
また同地区はカンボジアにおけるマイノリティであるクメール族以外のマジョリティ(ベトナム系、イスラム系住民など)も多く居住している。さらに内戦後の90年代半ばから発生した地方からの急激な人口移動により移り住んだ新住民の住む、いわゆる「スラム」地区でもある。また同地区の居住民が民族的少数派であることや、貧困等が原因の厳しい社会的差別にさらされている現状である。同地区の子ども達が公立の小学校に通学することのできない理由のひとつには、これらの根強い差別意識があることが挙げられる。 同地区に位置する学校であるVDTOは、同地区に住むT.ブティ氏の個人立によるチャリティスクールである、公立学校へ経済的な事由により通学できない子ども達を対象として、基本的に無償の教育を提供する小学校である。VDTOに通学する子ども達の家庭の多くは、地域を流れるスティングミアンチェイ川の流域や川面にバラックを建て、非合法に居住している。ARBAでは過去、同校の子ども達に対し、主として学校行事の実施などを中核とした教育課程支援活動を行ってきた。過去に実施した行事は以下の通りである。
- 2006年2月 プノンペン市近郊にある古都ウドンへの全校遠足の実施
- 2006年8月 プノンペン市内チェーンアエク村での「田植え」体験活動
- 2007年2月 アンコールワットのあるシェムリアップへの2泊3日の宿泊遠足
- 2007年8月 VDTOでの地域住民や保護者を招いての「地域まつり」の実施
- 2008年2月 プノンペン市内のフィールドワーク「私たちの町を知る」活動支援
- 2008年8月 シアヌークヴィルへの生徒主体の実行委員会主催の1泊2日の全校遠足
これらの活動はいずれもARBAの活動テーマである『建物を「建てない』『「お金を「渡さない』支援活動を踏襲し、そのうえでなにができるのかを希求した結果として、すべての日本人が当然のように経験している学校行事である「遠足」の実施ノウハウを活かすことを通じて新しいスタイルの国際支援を行おうとしたものであった。また遠足の自主的な運営を通じて子ども達みずからに「私たちの学校」という自分の通う学校への帰属心を芽生えさせ、地域の担い手としての自覚や、自分達の学校と居住する地域への愛着と関心を醸成することを目的とした取り組みを続けてきた。本プロジェクトでは、これまでVDTOと共同開催してきた上述の学校行事運営とその実施目的をさらに敷衍し、地域住民のコミューンである「住民ひろば」としての学校の機能を創ることをねらいとしている。これは日本における「公民館」の機能を同地区に導入することを通じて、学校とはことなる求心力を地域に定着することを目指すものである。「住民ひろば」では、放課後や休日に子ども達や地域住民の集う空間としての機能だけでなく、地域自治活動の拠点として機能させることを狙いとしている。
活動内容
今回の中期滞在ケースオフィサーの主たる業務としては、「地域住民ひろば」の物件の調査と同ひろばの利用法に関する地域調査や住民・学校関係者への聞き取りや、子ども達による管理委員会設立の可能性について模索することにある。 まずは2009年1月より試験的にVDTOに隣接する物件の1部屋を借り上げ、そこを拠点として本事業の目的に対する地域調査ならびに啓蒙活動を実施することにした。実施に際しては当法人の常任理事会メンバーを中核に数名でプロジェクトチームを編成し、交代で2ヶ月程度(2009年1月末~3月末)の期間で初期調査を完了させる。その後これらの試験運用に結果を踏まえ、継続的な事業として運営可能かどうかの判断を行う。滞在するケースオフィサーには日本における児童館や公民館活動を踏まえ、学校教育の補習や、子ども達の地域活動の利用を見据えたアドバイスとコーディネート、また地域住民への同事業に対する理解啓蒙をVDTO関係者との連携の下に遂行することが求められる。地域ひろばの利用方法としては
- ・ 子ども達の集いの場として、学習活動だけでなく、あそびと社会的連帯や人間関係を育む
- ・ 安全で、楽しく、そして誰でも利用できるパブリックスペース
- ・ 自分たちの地域の抱える問題や自治意識を育む場
- ・ VDTOに通う子ども達だけでなく、地域の子ども達すべてに開かれたスペース
- ・ 子どものみならず地域住民にとっての「憩いの場」としての活用
などが想定される。
VDTOの詳細はこちらから
スティングミアンチェイ地区とVDTO