職業訓練開発機構(Vocational and Developmental Training Organisation:VDTO)について

学校を地域の中心に―自治のための地域力・住民力を学校から創ろうー
カンボジア・プノンペン:VDTOとスティングミアンチェイ地区支援活動

NPO法人アルバ カンボジア支援プロジェクト

■スティングミアンチェイってどんなところ?

カンボジアの首都プノンペン。かつて「東洋のパリ」といわれた美しい街並みの名残のある都市です。この街の南端、小さな川に架かる橋を渡ってすぐのところに私たちの支援するVDTOがあります。

この川の名前は、カンボジア語で「スティングミアンチェイ」 じつはこんな意味なんです。
 「希望」=ミアンチェイ、「川」=スティング    「希望の川」・・・・
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この地区は90年代初めの急激な都市化に伴い、地方からの人口流入を受けて、地方から移り住んだ人が居住する地区です。地方出身者だけでなく、人種・宗教的なマイノリティ(チャム族やベトナム系・シーア派イスラム信者)の人たちも多く暮らしています。ここは上下水道や電力などはもとより、生活道路なども未整備のため、雨季はいたるところで沼地状態になり低地の家屋では床上浸水するなど、衛生・安全面の劣悪な地区。いわゆる「スラム街」なのです。また近くにはプノンペン市内のゴミを一手に集約するゴミ集積場があり、そこで暮らす人々・子ども達も数多くいます。

■ブティさんとVDTOの子ども達

この地に、ARBAの現地カウンターパートナーであるTep Vuthy(テップ・ブティ)さんはVocational and Developmental Training Organization(VDTO)を設立し、子ども達の就学支援・教育活動を行っています。DSCF2434.JPG
ここは教育制度的には初等教育学校ですが、あえて「学校(school)」の呼称をけていないことからも、設立理念である「子ども達に生きる力を」はぐくむための実践的知識や職業能力開発などを盛り込んだカリキュラムにより運営されている学校なのです。ブティさんはカンボジア社会ではエリートとして生きることができる立場にいながら、スラム街のごみの山の子どもたち、人々と共生することを選択しスラム街の子どもたちのための学校「VDTO」を運営しています。現政府の問題点を感じつつ、しかしそのなかで自らの生きる場所を定め、バイタクの運転手や観光ガイドをやりながら自分の夢の実現のため、ただ黙々と、そしてひたむきに、かつ熱く生きています。彼の原動力の根底にはこの国に対する思いと、不正や言われない差別に対する強烈な抵抗感があります。しかしだからといって反政府活動に没頭するわけでもなく、困難な状況の中でスラム街の人々の権利向上のために共にしたたかに、しなやかに活動を続けています。

 ARBAはこのようなブティさんの活動を数年にわたって見続け、そして何か私達にできるのだろうか?を考え続けてきました。


過去、海外の多くの支援団体がこの地区で支援活動を展開してきましたが、そのどれもが思うような成果を挙げられずに終わっています。その原因は何かをきちんとみつめ、そのうえで自分達にしかできないDSCF2466.JPG国際支援を編み出してみたい。建物や施設を作るだけのような支援ではなく、長く、そしてゆっくりとカンボジアの人々とともに生きていけるような支援活動を目指して、現地での調査活動を重ねてきました。
2006年2月には、カンボジア初の遠足をVDTOの子ども達と古都ウドンでおこないました。同年8月には子ども達との田植えの体験活動、また2007年2月には、アンコールワットへの宿泊遠足を実現することができました。しかしこれら一連の学校行事の目的は、単に遠足や課外活動を学校の時間割に加えることではありません。

その行く末には、子ども達にみずからの住む地域への愛着心をもってほしい、そのために「自分達の学校」としてのVDTOをもっと好きになってほしい。地域とともにいきる学校としてのVDTOへの帰属心が、ひいてはその地域への愛着へとなっていくのではないか、そのためにも、自分達が主役となる学校行事をカリキュラムの中に組み入れていくことを狙いとするものです。

 皆さんにも経験があると思います。かつて自分の通っていた小学校や中学校・ふと突然訪れてみたくなる。学校の周りを歩いてみたくなる、懐かしい学校の姿に旨がキュンとなる・・・そんな想いに駆られたP1000147.JPGこと、きっとあると思います。それこそが、地域とともに生きる学校への愛着心であり、自分の住む地域への愛情だと思うのです。スラム街に暮らす子ども達にも、こういった思いを感じてほしい、それが自分の住む地域の関心となり、ひいては地域改革の力へと繋がっていくのではないでしょうか。いままでこの地区で活動したNPOが成果を挙げられずにいたのも、こういった住民自らが手を挙げるような、地域環境の改善の担い手としての意識が欠けていたためではないか、という思いがあるのです。P1000161.JPG
自分の好きな地域だからこそもっとよくなってほしい、劣悪な環境を変えたい、そんなイノベーションがここに住む人々の中から湧き上がることこそ、人と人との出会いを基本にした国際交流・支援活動を続けてきた私たちARBAにしかできない[オルタナティブ]だと思うのです。

■私たちの願い―これからの展望

いままで述べてきたような目的を達成するため、まずは親や地域の人々にもっと学校に関心を持ってほしい、その一環としてARBAがVDTOと共同で取り組んできた学校行事の成果報告を兼ねた遠足のビデオ公開上映会を実施することを計画しています。また上映会と同時に、地域の 親や住民を対象とした「地域まつり」をVDTOで開催することも企画しています。

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親と子ども・そして近所の人々が学校に集うことのできる機会を作ることで、まずは学校や子ども達の教育に関心をもってもらうことを狙いとしています。

将来的にはさらにそれを広げ、定期的な住民の集まりを学校で開き、そこで地域の課題を相談し、改善策を相談検討する住民自治の場としての[住民ひろば]を創ることを目的としています。今回のパーティーでの収益は、緊急性のある教材教具の支援(文具・教科書などの子ども達への支援や黒板等の教具提供)以外は、これらの行事運営のための基金として利用していくつもりです。

 子ども達みずからに「私たちの学校」という自分の通う学校への帰属心を芽生えさせ、地域の担い手としての自覚や、地域と自分達の学校を愛する心を子ども達だけでなく、この地域に暮らすすべての人々に芽生えさせることを目的として取り組みを続けていきます。住民が学校を中心に地域の問題を話し合い・解決していく・・・そういった「地域力・住民力」を生み出すことがこのプロジェクトの願いなのです。

この願いを私たちARBAは、在日のカンボジア人の皆さんと共有し、参加する人それぞれが自分にしかできない支援活動を見出していければと願っています。

ぜひ多くの皆さんにこのプロジェクトに関心を持っていただき、わたしたちとともにアジアの子ども達・人々との共生的関係を創っていきましょう!御協力をお願い申し上げます。