カンボジア・スラム街の子ども達の撮った写真展
カメラを向け、シャッターを切る。レンズの先にあるのは、友達や、家族、美味しそうな食べ物、いつも遊んでいるモノ、場所、もしかしたらいつもとは違った新しいものかもしれない。
私もそんな好きな人や好きなもの、新しいものに出会った時にカメラを向けたくなり、シャッターを切る。
カンボジア、スラム街で生活する子どもたちは、何にカメラを向け、どんな時にシャッターを切るのだろう。子どもたちが撮った写真を見たいと思ったのがこのプロジェクトのきっかけでした。
彼らの撮った写真をみたいと思ったのと同時に、「写真」であれば、彼らの母語であるクメール語を話すことができない私でも通訳を介すことなく、もっとじかに彼らの見ているもの、好きな人、好きなことを感じることができるのではないか、そんな願いを込めた企画がこの「カメラを通して自分の好きを見つめなおしてみよう」というこのプロジェクトでした。
作文や詩といった、自分の気持ちを表現する機会が少ないカンボジアの学校の中で、きっと「写真」はじぶんを語る「言葉」になり得るのではないか、何かを感じ・思い、そしてカメラを向け、シャッターを切る。その「何か」が詰まった「写真」は彼らの言葉そのものなのではないかと思っています。またそれは過酷な環境の中で、したたかに、そしてしなやかに生きる彼らの魂の叫びでもあります。
プロジェクトスタート以来、子ども達と毎日一緒にカメラを持って撮り合いっこをしたり、学校、友達を撮ったりしながら写真を撮りつづけた2年間でした。
気がつけば子どもたちが撮った写真は1000 を超す枚数になっていました。
オシャレをして自分を撮る子、ポーズを決めて撮る子、兄弟を、友人を、家族を自分の住む街を、、、たくさんの一枚があります。きっと一枚一枚、彼らの物語があるのだと思います。私はその物語のすべてはわからない、それでも、彼らの写真をみて想像しながら彼らの世界を共有していきたい、いつまでも彼らとともに生き、ともに育っていきたい・・・
私達ARBA は、カンボジアの地で10年にわたり「建物を建てない、お金を渡さない」支援をめざして活動を続けてきました。建物のように形を残すのではなく、すべての人の心の中に刻まれるような支援を、結果から遡るのではなく、この地球にいきる仲間として成長する過程をともに楽しむことができるような、そんなあたらしい支援のあり方をめざして、カンボジアの人たちとともに悩み、考え続けてきた10年でした。
写真を撮る、というこのちいさな試みが、子ども達の何10年後かにどのような結果をもたらすのかはわかりません。子ども達の写真を見ていただいた皆さんは、そこにどんな「ものがたり」をみつけることができるのでしょうか、このプロジェクトの評価は、この写真展をご覧いただいた方々に委ねたいと思っています。そしてみた人がその撮り手である子ども達に思いをはせ、そこにかけがえのない「ものががたり」をみつけてくれたら・・・そんな願いを込めてこの写真展を開催します。
「生きること・撮ること」写真展ディレクター 佐々木朝緒